砂塵がヴァルデアの荒野を灰色に塗る。風に背を向けた。地平線に街が見えた。ドーラン。北の交易路の街だったが、黄金時代の終わりとともに死んだ。
左手が熱い。紋章だ。生まれた時からある刻印が、今日は焼けるように痛む。ザル=カラムが近い。
街門に衛兵が二人。槍を構えている。あなたを見た。そして、見なかったことにした。
街門の脇に掲示板がある。色褪せた紙が何枚も。その中に一枚だけ新しいものがあった。
「ザル=カラム調査隊募集。報酬:金貨五十枚。依頼主:ドーラン商人組合」
その下に赤い墨で別の紙が重ねてある。「警告——過去三ヶ月で四十七名が向かった。生還者:なし」
紋章が脈打った。
油と鉄の臭い。「鉄の爪」の扉を開けた。老ドワーフが無言で剣を磨いている。顔の左半分が白く焼けただれていた。
棚は半分空だ。短剣(金貨三枚)、剣(金貨八枚)、手斧(金貨五枚)。
金貨三枚を差し出すと、職人は無言で短剣を渡した。刃は古びているが、刃こぼれ一つなく丁寧に手入れされている。柄の握り感も悪くない。実用に足る品だ。
受け取ろうと手を伸ばした瞬間、職人が低く言った。「……五十年前にも、そんな紋章を持つ奴がいた。あの遺跡に入っていった。二度と出てこなかった」
それだけ言って、職人は口を閉じた。剣を磨く手が再び動き始める。話は終わった。
砥石が止まった。「あそこには行くな」
「七人で入った。帰ったのは私だけだ。仲間は皆、死んだ者の声に引き寄せられた。あの遺跡は弱いところを突く」
「その紋章を持つ者は、特に」
あなたは左手を見た。職人はまた磨き始めた。
路地の奥に人影がある。ゴブリンだ。継ぎ接ぎの外套。腰に短刀を二本。壁に背をつけて動かない。
逃げる気はないらしい。目を細めて、あなたを上から下まで見た。値踏みする目だ。路地で長く生きてきた者の目。
「情報を売る」と言った。「金貨一枚。損はさせない」
ゴブリンは受け取ると目を見開く。指先で硬貨の重さを確かめ、それから素早くポケットへしまった。「ナック、って呼んでくれ。情報屋だ。今日拾ったのがこれだ」と彼はポケットから小さな石板を取り出す。表面に細かい文字が刻まれている。「商人が捨ててた。読んだら面白いことが書いてある。『ザル=カラム、地下一層、左の廊下、三番目の扉』ってな。何の扉かは分からない。でも値打ちものだろ」
ナックはあなたの左手の紋章をちらりと見た。その目が一瞬、意味を読むように細くなった。「あんた、ザル=カラムに行くつもりだろ。体が引き寄せられてる。おれには分かる。じゃあ、この情報、追加で売る。金貨二枚。どうだ」
ナックの耳が立った。「じいちゃんから聞いた話がある」
「三百年前、黄金時代が終わった夜——ザル=カラムで爆発があった。その夜から星脈術師が力を失った。一夜にして」
「ヴォルカネスのしたことだ。元は賢者だった。何かが間違った。今は封印されている。三百年間」
耳が動かなくなった。「あんたの紋章、前から光ってたか」
ナックは声を落とした。「正直に言う。あんたを利用しようとしてた。一緒に行けば遺物が手に入る。それを売ればここから出られると思った」
目をそらした。「でも紋章を見たら——そういう話じゃないと分かった。あんたは引き寄せられている。情報屋の勘だ」
「連れていけ。道中の情報は全部頭に入っている」
「金貨が足りない」とあなたは言った。
ナックは耳を立てた。少し驚いたような顔をしてから、「正直なやつだな。じゃあこうしよう。金貨はなくていい。その代わり、ザル=カラムで見つけた古代の品物のうち、一つをおれに選ばせてくれ。価値があるものを一つだけ。それで十分だ」
「ただし、命が懸かっている場面では先に行かせてもらう。おれは情報屋であって、戦士じゃない。これは最初に言っておく」
北の方角に青白い光が瞬いている。ザル=カラムだ。毎晩少しずつ強くなっているという。宿の窓から外を眺めていると、街灯の届かない路地に人影が動くのが見えた。
部屋の外から声が漏れてきた。壁越しでくぐもっているが、内容は聞き取れる。「あの紋章の冒険者か。そいつを利用できる」。別の声が応える。「紋章があれば遺跡の扉が開く。何としても、紋章が必要だ」
あなたは静かに剣を手に取った。
路地に降りると、人影はすでになかった。しかし地面に何かが落ちている。小さな金属製の円盤だ。直径は親指ほどで、表面に細かな幾何学模様が刻まれている。拾い上げると、左手の紋章がわずかに反応した——ほんのわずか、しかし確かに。
裏面に文字がある。古代語だが、意味は読み取れる。「闇の商会」。あなたはこの名前を知らない。しかし、それが危険なものであることは、手のひらに伝わる微かな冷たさから分かる。
「何か御用かい」マグダは布巾で杯を拭きながら、あなたをちらりと一瞥した。ハーフリングにしては背が高く、肩幅もある。かつてはドーランの自警団に所属していたという話だが、今の穏やかな顔立ちからそれを想像するのは難しい。ただ、その目の奥に宿る鋭さは、長年この街で生きてきた者のものだ。
酒場は半分ほど埋まっている。テーブルに着いた者の多くは旅装束で、腰に武器を提げている。冒険者風の者たちだ。皆、どこかへ向かう目をしている。行き先は一つしかない。全員ザル=カラムへ向かうつもりだろう。そして全員、戻ってこないだろう。
「二十年この街にいる」マグダは杯を拭きながら言った。手は止めない。「ザル=カラムへ向かった冒険者は何十人もいた。誰も戻らなかった。それでも来る」
布巾が止まった。「引き寄せられるからだ。光が強くなるたびに、来る者の目が変わる。欲じゃない。呼ばれている目だ」
あなたの左手を見た。一秒だけ。「お前も同じ目をしている」
「私も見たから」とマグダは静かに言った。初めて声のトーンが変わった。「二十年前、この街に来た時から。毎晩同じ夢を見る。あの遺跡の奥に続く闇と、その中で待っている何か。だからここを離れられない。でも二十年間同じ夢を見続けて、今は怖くはない。慣れた」
「お前に一つ教えてやる。ザル=カラムの地下には三層ある。地上層、地下一層、地下二層。最下層の奥に星の間がある。そこに答えがある。どんな答えかは知らない。でも、皆そこへ向かって死んでいった」
杯を拭く手が止まる。マグダは杯をカウンターに置き、まっすぐあなたを見た。「生きて戻れ」
「五十年前、弟がいた。ドゥルムという」と老ドワーフは言った。声が低く、乾いている。「ザル=カラムに行くと聞いた時、私は止めた。一週間、毎日止めた。だが弟は聞かなかった。あいつはいつもそうだった」
老ドワーフの声が、しばらく途切れた。「弟の名はあそこの石碑に刻まれている。地下一層に、死んだ冒険者の名前を刻んだ石碑がある。五十年前はまだ余白があった。今は満杯だろう」
「だから行く。弟の名前を、自分の目で確かめに。それだけだ。それだけのために五十年間、生きていた」
シラはあなたの問いを聞いて、静かに目を伏せた。「私はヴォルカネスを知っている。人間だった頃の彼を。三百年前、彼はオルト=ヴァルという名の星脈術師だった。温厚な男だった。声も穏やかで、弟子たちに慕われていた。研究に人生を捧げていた」
「何が彼を変えたのか、私にも分からない。ある日、別人のようになっていた。ヴァルデアの星脈を独占しようとした。力の独占が何を意味するか、分かっていたはずなのに。多くの者が死んだ。私は逃げた。弱かった」
「三百年間、私はここにいる。彼が封印された場所の近くに。あの時逃げた理由も、ここに留まり続ける理由も、自分でもよく分からない」
ゴルムは振り返らなかった。
沈黙。それから低く笑った。「五十年前は怖かった。足が動かなかった。だから弟が一人で降りた。そのまま戻らなかった」
「今は違う。怒りの方が大きい。怒りは恐怖より長く燃える——それが分かるまで五十年かかった」
神殿の奥の礼拝堂に、一人の男が横たわっている。三十代と思われる人間で、革鎧がずたずたに裂けている。意識はあるが、顔色は青白く、目の焦点が定まらない。五日前にザル=カラムへ入り、他の仲間十五人と共に地下一層を目指したという。
「番人に気づかれた」と男は言う。声が掠れている。「走った。全員走った。私だけ逃げ切れた。仲間は……全員中に残っている。生きているかどうか、分からない」
その目に光はない。生きて逃げ延びたことを喜んでいるのか、後悔しているのか。読み取れない。
「賢者の間に何がある」とあなたはオルドに聞いた。
老司祭は羊皮紙の地図を指でなぞった。「その部屋に入れるのは、紋章を持つ者だけだ。三百年前、最初の封印が施された日から、紋章なしでは扉が開かない。中に何があるかは私にも分からない。しかし古い文献によれば、ヴォルカネスの封印を強化する、あるいは完全に閉ざすための鍵がそこにある」
「その紋章は、三百年前の賢者が刻んだものだ。あなたの先祖が関わっているのか、あるいはあなた自身が過去のどこかでその場にいたのか——私には分からない。しかし、その手の熱さが、あなたに答えを求めていることは確かだ」
謎の金属円盤をオルドに見せると、老司祭の顔色が一瞬で変わる。素早く周囲を見渡してから、あなたに近づき、声を潜めた。「これは……闇の商会の印だ。ヴォルカネスの復活を望む組織だ。現在の混乱から利益を得ている。星脈が枯れたままであることで、独占できる力がある者たちだ」
裏面の文字を読み終えた老司祭が、円盤を素早く返してきた。「持っていろ。しかし気をつけろ。この印の持ち主は、今もこの街のどこかにいる。お前を探している」
神殿の外で、風が唸った。
二階の部屋は狭いが、清潔だ。金貨一枚。藁のベッドに横になり、左手の甲の熱を感じながら目を閉じた。旅の疲れが体を重くする。しかし眠りはなかなか来ない。
夢を見た。暗闇の中に、巨大な扉がある。石で作られた扉に、無数の古代文字が刻まれている。文字は光りながら流れている——まるで生きているかのように。左手の紋章が応えるように光り始め、扉が内側から押されるようにゆっくりと開こうとした。
そこで目が覚めた。夜明けの少し前だ。宿の外では荒野の風が鳴っている。左手はまだ熱い。
金貨一枚をカウンターに置くと、マグダは素早くそれを懐にしまい、声をさらに低くした。身を乗り出すようにして言う。「ザル=カラムの光が灯り始めてから、ここに集まる連中の顔つきが変わった。普通の冒険者じゃない。欲で来ているんじゃない。目が違う。あの光を見て、引き寄せられた者の目だ」
「三日前、黒いローブの男たちが酒場に来た。三人組だ。誰にでも同じことを聞いて回っていた。紋章持ちの冒険者を見なかったか、と。お前のことを探している者がいる。名前は知らないが、目的はある」
カウンターの端に若い男が座っている。革鎧。腰の長剣に貴族の家紋が彫られていた。
あなたの左手を見た。それだけで立ち上がった。「パロ国貴族の三男、ラルハスという。ザル=カラムへの依頼を三つ受けたが、三つとも依頼主が死んだ。あんたと行く」
笑顔は自然だった。しかし一瞬、視線が逸れた。どこを見たのか、追えなかった。
ラルハスは革鞄から古い羊皮紙を取り出した。丁寧に折り畳まれており、広げると精密な見取り図が現れた。ザル=カラムの地上層だ。「番人ゴーレムの動作パターンを調べた」と彼は言う。「奴らは音と光に反応する。静かに、かつ素早く動けば、気づかれずに通過できる箇所が三つある。ここ、ここ、そしてこっちだ」
図面は精密だ。何週間もかけて作ったものだと分かる。線の細さと角度の正確さが、それを物語っている。
「ここが初めてか」とあなたは聞いた。
「ああ。書物と聞き込みで作った」とラルハスは答えた。
彼は地図を丁寧に折り畳んだ。その手つきに、迷いも緊張もなかった。
「錆びた剣亭」はドーランで唯一まともな酒場だ。扉を押し開けると、煙草の煙と獣脂の臭いが鼻を打つ。床には枯れた藁が散らばり、天井からは煤けた蝋燭が数本ぶら下がっている。
カウンターの奥では、ホビットの女将が布巾で杯を拭きながら胡散臭そうにこちらを見ている。テーブルに複数の人影がある。旅装束の冒険者風の者、地元の商人らしき太った男、そしてフードを深く被って顔を隠した者が一人。全員がこちらをちらりと見て、すぐに視線を外した。
老ドワーフの名はゴルムという。かつて王国近衛隊の隊長だった。
「弟がザル=カラムで死んだ。五十年前のことだ。だから行く」
右手は四本指だった。
神殿は街の北の端にある。石造りの質素な建物で、装飾らしい装飾は何もない。扉は固く閉ざされており、外からはほとんど音も漏れてこない。ノックをすると、長い沈黙があり、やがて細く扉が開いた。
老いた目がのぞいた。皺の深い顔、白い眉。司祭だ。その目がすうっとあなたの左手に向けられた。刻印を確認する。それから扉を大きく開けた。「お待ちしていました」と彼は言う。「ずっと、待っていました」
三人組のテーブルに近づくと、老ドワーフがじっとあなたの左手を見た。杯を持つ手が止まる。「……その紋章」と彼は言う。声に力がある。「どこで手に入れた」
「生まれた時からある」
三人は顔を見合わせた。フードの人物が微かに息を飲む。老ドワーフがゆっくりと立ち上がった。
フードが落ちた。銀髪。緑の瞳。瞳に三百年の重みがある。首に黄金時代の護符。
「三百年、ここで待っていた。紋章持ちが来るのを」
「シラという。伝えなければならないことがある」
司祭の名はオルドという。神殿の奥の小部屋に通されると、彼は震える手で古い羊皮紙を広げた。ザル=カラムの地図だ。地下三層にわたる構造が、几帳面な筆致で細かく記されている。「私が若い頃から持っているものだ」とオルドは言う。「正確かどうかは保証できない」
「地上層は番人ゴーレムが守っている。彼らは黄金時代の技術で造られた自動の番人で、今なお動き続けている。地下一層には研究区画がある。地下二層には神殿がある——星脈術の祭壇だ。その紋章があれば、祭壇に触れることができる」
オルドは羊皮紙を折りたたみ、あなたに押しつけた。「これを持っていけ。私はこの街から出られないが、これがお前の命を救うかもしれない」
「地上層は番人ゴーレムが守っている。地下一層には研究区画がある。地下二層には神殿がある——星脈術の祭壇だ。その紋章があれば、祭壇に触れることができる」とオルドは繰り返す。
「地下三層には、星の間がある。ヴォルカネスが封印された場所だ。三百年間、誰一人としてそこへ達した者が戻っていない。その意味を、理解しておいてほしい」
街門を出て間もなく、道の真ん中に人影が立っている。最初は見間違いかと思った。しかし違う。
巨大だ。人間の二倍はある巨躯が、荒野の光の中に黒くそびえている。黒鉄の鎧に全身を包み、背丈を超える大剣を地に突き立てて、両手で柄を握っている。オークだ。その目は血のように赤く、太陽の光を吸い込むように輝いている。
「通行料だ」とオークは言う。声が荒野に響く。「金貨五枚。払えないなら、ここで終わりだ」
荒野を三十分ほど進んだところで、岩陰から何かが飛び出した。地面が揺れた。
ゴブリンだ。しかし普通のゴブリンではない。人間の二倍はある巨躯に、筋肉が異常なまでに発達した四肢。顔の半分が焼け爛れており、皮膚が溶けて固まったようになっている。目が四つある——元は二つだったはずの場所に、黒い眼球が四つ並んでいる。ゴブリンブルートだ。黄金時代の魔法実験で生まれた変異体だという話を、どこかで聞いたことがある。
咆哮が荒野に響き渡った。
「一緒に来るか」とあなたは四人組のリーダーに言った。赤いスカーフを巻いた男が、しばらくあなたを見た。仲間たちと目を合わせてから、また戻ってくる。
「……あんた、紋章を持ってるな」と男は低く言う。「見たことがある。あれは……本物か」
「本物だ」
男は息を吐いた。「俺たちは向かない。遺跡の内側は俺たちの領域じゃない。力仕事は得意だが、古代の罠や魔法の番人は別の話だ。ただし、この荒野については詳しい。水場、山賊の縄張り、安全なルート——それは教えられる」
山賊は三人組だ。それぞれが短剣と革鎧で武装している。リーダーは額に古い傷跡がある三十代の男で、目に飢えた光がある。荒廃した大地で生き延びてきた者の目だ。油断はない。
「財布を置いていけ」とリーダーは言う。「紋章持ちの冒険者か。ならば金も持っているはずだ。賢い選択をしろ」
森の入口に着いたのは夜半過ぎだ。古い木々が頭上を覆い、星が見えなくなった。シラが先導する。エルフの目は夜でも見える——人間には闇しか見えない場所を、彼女は迷わず歩く。
しばらく進むと、木の根が複雑に絡み合った場所に出た。シラが手を上げて止まった。「足元に気をつけろ」と彼女は言う。「ここから先、地面が信用できない。落とし穴のような窪みが随所にある」
古代の街道は舗装されていたが、三百年の歳月がそれを半ば荒野に戻している。石畳の隙間から草が生え、割れた石が足元に散らばっている。道の脇に荷馬車が一台止まっている。御者の老人が、馬に木桶で水を飲ませている。
一行が街道を進み始めてしばらくすると、前方に篝火の光が見えた。複数の人影が動いている。
ザル=カラム。黒い石が荒野に聳えている。半分以上が地下に沈んでいた。地上だけで小さな町ほどの規模がある。
紋章が痛んだ。熱ではない。痛みだ。建物全体があなたを引いている。
正門の石像が二体。動かない。しかしその目が——こちらを向いていた。